こんにちは。吹雪です。
皆さんは、今まで119番通報をしたことがありますか?
今回は、私の実際の119番通報体験談をお伝えしたいと思います。
安易な119番通報問題
私は、110番や119番通報と聞くと、大したことではないのに気軽に通報して、他の人への迷惑になっている人がいるということを思い出します。
119番通報で来た救急車を通院のためのタクシー代わりに使ったり、公共トイレの紙が無くなったから110番通報したとか、確か昔テレビでやってたのはそんな感じでした。
今はどうなってるんでしょうね。緊急性があるのかを判断してもらうための#付のダイヤル窓口が周知されてるから、以前よりはマシになったんでしょうか…。
こと119番に関しては、通院のためのタクシー代わりは論外として、明らかに重篤でない症状の場合は考慮すべきだ、というのが一般論だと思います。
私もそう思っていました。基本的には今でもそう…思うのですが、その自己判断が生死を分けたかもしれない経験をした身として、一概には言えないなとも思うのです。
病気発症の前日の話
これは、「抗NMDA受容体脳炎 罹患からの流れ」の中の薬局で意識を失う前日のお話です。
不可解な症状
その日、熱が38度程度の風邪のような症状が出ていて、家で休んでいました。
確か、3月29日ぐらいだったかな。高校を卒業して、次は大学の入学式が来るのを待っていた、そんな時期でした。
私以外の家族は仕事や買い物に出掛けていて、家には私1人になっていました。
お昼過ぎで、ベッドで寝ているのに飽きて、リビングに来ていたときです。
椅子に座った状態で感じたのか、立っている状態で感じたのかは覚えていませんが、ふと身体の感覚に違和感を覚えました。
左足が捻れている。
そんな感覚でした。
確か他の場所にも変な感覚があったとは思うのですが、一番の違和感はこれでした。
気のせいかもしれないと思い、立った状態になって改めて自分の身体の感覚を確かめました。
視覚的には、自分の左足は真っ直ぐでした。よろけて立っていられないということもありませんでした。
けれど、確かに左足に捻れているという感覚があるのです。
例えるならば、左側の脚がねじで、それを膝のあたりだけ90度ぐらいドライバーで回した状態ですっていう感覚でした。
嫌な予感がする。
私の勘は、そう告げていました。
この頃好んでみていたメジャーな健康番組にも紹介されたことのない症状で、勿論それまで1回も経験したことのない感覚でしたが、実際に足を捻挫したときの感覚とも違う、その視覚と感覚の不気味な不一致感は、時間が経ってもただただそこに在り続けていました。
数分の逡巡
どうしよう。
私は立った状態のまま、どうやったら頭に鳴り響くこの嫌な予感から抜け出すことができるか考えました。
自分が取れる選択肢は2つしか思い浮かびませんでした。
1つは母が帰ってくるのを待って相談すること。
そしてもう1つは、119番に電話することでした。
母に相談した場合、恐らくそう重大なこととして受け止められないだろうと思いました。せいぜい次の日に病院に行ってみようかぐらいの反応でしょう。私が同じ立場でも、そうすると思いました。
その程度のものであればいい。この嫌な予感はただの気の所為であればいい。
頭の中でそう願い、気を逸らそうとしました。…でも、どんなに気持ちをポジティブな方向に持っていこうとしても、嫌な予感はまったく薄れませんでした。
一刻を争うかもしれない。
なんていう馬鹿な考えが、今までにない重さでのしかかってきました。
明日になってから病院に行ったんじゃ手遅れかもしれない。この左足の違和感を明日まで抱え続けるなんて怖い…。
この嫌な予感から開放されたい。
その時に思い至ったのが119番でした。
けれど、119番を思いついたはいいものの、その場所から中々電話機の前まで移動することができませんでした。(まだ固定電話が普通に各家庭にあった)
当時、上記に書いたように110番や119番へのいたずらともとれる通報が問題になっていて、それについてのTVCMが流れているほどでした。
私はそれを見て、なんて非常識な人がいるんだろうと思いましたし、当然自分は絶対そんなことはしないと思っていました。
では、この症状を理由にして119番通報しようとしている私は何なのだろう。
そう思いました。
意識が朦朧としているわけでも、大量出血しているわけでも、身体に激痛が走っているわけでもありません。端から見れば、38度ぐらいの熱があって、ちょっと身体に違和感を感じている人というだけです。
いくら自分が不安に苛まされていようと、結果的にはただの体調不良かもしれない。そうなれば、救急の方々に迷惑をかけるだけなのではないか。
そんなことを考えながら、そこまで考えても以前衰えを見せない嫌な予感としばし戦っていたのを覚えています。
通報してから
結局、嫌な予感が遠慮を上回り、私は119番に電話をしました。
話した内容はあまり覚えていませんが、「嫌な感じがするんです!」と症状を訴え、救急車を向かわせるという話になったときに「すみません」と言った気がします。
そして、電話が切れたあと、ふとある疑問が浮かびました。
救急車に乗るときって何をどうすればいいの?
そんなこと考えてる余裕あるのか、と今ならツッコめますが、色々混乱してテンパっている中で、これは難題でした。
家には今自分以外誰もいません。自分自身はパジャマを着ている状態です。そして、消防署は家からそこまで遠くないので、直ぐに到着するはずです。
3月末なのでそのまま外に出てもまあそこまで寒くはないけれど、上を羽織ってもいいのだろうか。そもそも普段着に着替えたほうがいいのか?でもそれだと救急車呼んだ人っぽくない。あと、何を持っていけばいいのだろう。そうだ鍵。家に誰も居なくなるから鍵をかけて出なくては。連絡とか取らないといけないから携帯は持ってったほうがいいよね、でも電源は切っておいたほうがいいのかな。
確か、こんなことを一生懸命考えていたと思います。
結果として、自分の家の門の前で、パジャマで運動靴を履いて鍵と携帯を握りしめて救急車が来るのを待っていた記憶があるので、まあ、当時の自分はそういう結論に至ったんだと思います。
外に出てから少しすると、すぐ近くの道に救急車が止まりました。
後ろの扉が開いて、中から消防隊員の方が出てくるのを見て、私は担架が出される前に急いで近づきました。
「あなたが通報された方ですか?」
「はい、ご迷惑をおかけいたします。よろしくお願いいたします」
救急車に乗り込むときに、そんな会話があった気がします。少なくとも、救急車をタクシー代わりに使おうとしているつもりなどではないのだと、乗っている間ずっと恐縮して謝っていたのを覚えています。
そして、救急車の後ろの扉が閉まり、私が担架に寝た状態になってから、詳しい症状を聞かれました。
その後、どちらが先だったかは覚えていませんが、家族への連絡先を聞かれ、消防隊員の方がいくつかの病院に電話して、最終的に救急車が向かった先が慶應義塾大学病院の救急でした。
救急搬送後
慶應義塾大学病院の救急に着いてからのことはあまり覚えてません。
確か女性の医師に話を聞かれ、熱を計ってインフルエンザかもしれないと言われて検査して、その結果と両親が来るまでベッドで横になっていたと思います。
その時はそれ以上の症状が出なかったので、原因は不明のまま、タクシーで両親と帰りました。
119番通報をしたことについて特に言及しない両親に、タクシーの中で謝ったような気がします。
結局、ただの杞憂なのか。
それでも嫌な予感は頭に居座り続けたまま、翌日に近くの総合病院にかかることになりました。
そして発症当日
翌日に総合病院に行く頃には謎の頭痛が発生していました。
ここでも私は診療に当たった医師に、今までに感じたことのない種類の頭痛だと訴えた記憶があります。
しかしこの時点でレントゲンをとってもやはり異常は見つからず、以前の記事にも書いた通り、その後薬局に向かい、意識を失います。
すぐに総合病院に連れ戻され、再びレントゲンを撮ると髄膜脳炎になっていることが判明するのですが、ここである問題が浮上しました。
その総合病院には、脳関係専門の医師が常駐していなかったのです。
それを聞いた母が、前日に救急車で慶應義塾大学病院に運ばれた旨を説明すると、診療に当たった医師がすぐに連絡を取り、そのまま救急車で慶應義塾大学病院に移送されることになりました。
救急車には、診療に当たった医師も乗り込んで付いてきてくださったそうです。
前日と同じ救急に着くと、事前連絡を受けて専門の医師などが準備万端で待ち構えていたらしいです。
119番通報が命運を分けた
慶應義塾大学病院に運ばれてからのことは、以前の記事に記載した通りになります。
罹患した病気が判明したのは、この慶應義塾大学病院の教授回診に、日本で当時唯一、同じ病気の特徴的な症状を診たことがあった北里大学の教授がたまたま参加されたからです。
つまり、その瞬間に慶應義塾大学病院に入院していなければ、病気の判明も治療の手段も皆目検討がつかないままだった可能性があります。
事実、その北里大学の教授が原因が卵巣にある可能性があると指摘したときも、他の医師達は半信半疑だったそうです。
脳炎の原因が卵巣にあるなんて当時は考えられなかったそうで、実際にお腹のレントゲンを撮って卵巣に腫瘍が見つかった後も、これが原因かは分からないけど切除した方が良いものに変わりはないので手術します、といった感じだったらしく、当時いかにイレギュラーなことだったのかが伝わってきます。
もしあの時、119番通報をせず、他の道を選択していたら。
少なくとも、今こうしてこの場に同じ状態で存在してはいないのだと思います。
以上、迷惑通報の類になりかけたが結果的にそうじゃなくなった体験談でした。
終わりに
余談ですが、最初の救急搬送で両親が駆けつけた時、女性医師に「娘さんは妄想癖でもあるんですか」的なことを訊かれたそうです。
失礼だな!三次元に対してそんな妄想力ないよ!二次元に関しては否定しないけどさ←
と、今でも地味に根に持っていたりします(笑)
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
関連記事↓